「委員会なんてめっちゃ久しぶりやな」
「ほんまやなぁ。白石くん、テニス部の練習ええの? 私一人でも大丈夫やで?」
「サボリはあかんやろ。それに支倉さん抜けてるとこあるし、一人にしとくんはちょっと心配やねん」
「ええええ!ひどい!」
「はは、冗談やって」
「冗談に聞こえへん……」
白石くんと私は保健委員だ。今日の委員会では新しいクラス掲示用の保健だよりとポスターが配られた。これを各クラスの掲示板に貼るというのが仕事らしい。
「何や、意外とすぐ終わりそうやな」
「うん」
白石くんと私は無駄に大きいポスターの筒を持ちながら、3年2組の教室に入る。
「そういえばもう全国行きは決まってるんやったっけ、テニス」
「ああ。全国大会は夏休み中に東京であるんやけどな」
「東京!いいなあ!おみやげ買うてきてくれへん?私雷おこしが食べたい!」
「よりによって何で雷おこしやねん。他にもあるやろ、人形焼とか東京ばな奈とか。まぁ時間あったらな」
「ありがとう、白石くんめっちゃええ人やぁ」
「せやけど。俺、タダでは働かへんで?」
白石くんは、何か企んでいるように笑う。
「や、お金はもちろん払うで?」
「そないなこと言うてんのとちゃうねん」
「?」
「支倉さんが俺の彼女になってくれるんやったら買うてくるわ」
い ま 、 こ の ひ と 、 な ん て い っ た ?
「前から好きやってん。支倉さんのこと」
「え、えええええええええええええええ」
「驚きすぎ」
「せやかて!」
「言うとくけど、マジやで」
そう言ってあまりに白石くんが真剣な顔をするから、私は黙るしかなかった。顔が熱い。だって、あんなに学年でも人気のある白石くんが、どうしてこんな凡人の私なんかを好きだなんて言ってくれるの?でも、そのセリフと表情が、冗談ではないことを物語っている。
「……素直な気持ち聞かせてくれへん?」
「……白石くんにそないな顔されたら、誰だって素直な気持ち言わずにはいられへんと思う」
人生ではじめて告白されて、しかも相手が白石くんで、私の心臓は爆発寸前だ。
男女各クラス1名ずつの保健委員に立候補したとき、男子で立候補してくれたのがひそかに憧れていた白石くんで、どんなにうれしかったことか。要するに、ずっとずっと隠してきたけれど、私は白石くんのことが好きだったのだ。いや、過去形なんかじゃない。
「……好き。私もずっと白石くんのこと好きやってん」
「………ほんま?」
「な、何で疑うん?」
「雷おこしにつられたんやないかって」
「ひどい!!そこまで安い女やあらへんっ」
「冗談冗談!許してや。なぁ、麻衣」
名前で呼ばれ、思わず、呼吸をするのも忘れる。
「ひよこも買うてきたるで」
そう耳元で囁かれた時にはすでに、私は白石くんの腕の中にいた。
Fin.